２００１年１月２８日、新宿のカメラのキムラさんの委託コーナーをうろついていて「発掘」したニコンＳ型用のコンパートメント・ケース。外観は使い込んだ感じで正直言って「みすぼらしかった」が、磨けばなんとかなると思ったのと、開けてビックリ「いい仕事してますね〜！」だったので、入手を決定した。海外の方の持ち物だったらしく、ショルダー・ベルトにマジックで、名前が書いてあった。

いい仕事の事例はいくつもあるが、ニコンＳ系の革製ファインダー・ケースなどはその代表格で、おそらく特注の金具に丁寧な「縫い」と殆ど工芸品のような出来栄えである。当時のライカＭ型用のファインダー・ケースも凝っているが、こちらの方が上である。

そのファインダー・ケースの留め金具と同じものが「ごろごろ」ついている。しかもそれらが全く痛んでいない。

こういうミニチュア感覚の品物は結構「オトナ」ゴコロをくすぐるのである。ドール・ハウスとか、グリコのおまけの世界と同様に、、、、

蓋上面の Nikon のロゴ。古いタイプである。後期の物はモダンな太字の Nikon の文字である。

上蓋背面（写真右）

フィルター収納用コンパートメントとフード収納用コンパートメント。フードは前部４枚、後部３枚の合計７枚が収納可能。またフードは、広角用の薄型のフードを２個収納可能である。

メイン・コンパートメント（写真下）

全面ビロード張りの豪華版。カメラ本体及びレンズ、アクセサリー収納部中央より右側には種々のレンズ及びアクセサリー収納用のコンパートメント、左側にはボディ及びレンズ収納用のコンパートメントが確認できる。それぞれの留め具の一方のベルトはゴムになっているので、収納物の長さ（高さ）に合わせて伸縮する。

メイン・コンパートメント（写真右下）

革製のツマミを持ち上げ、取り除くと、その下部にさらに収納スペースが現れる。ボディは収納出来ないが、１３５ミリレンズが横に収納可能なスペースである。

このメイン・コンパートメントは取り外しが可能で、筐体ごとスッポリと抜ける。

収納方法、収納すべき物の同定が全く付かない状態で、一応機材を詰め込んでみた。

ボディ２台＋広角から望遠のレンズ５本＋フード＋ファインダー他が楽に入る。正面のベルト付き収納部には仕切りも何もないので、他の携行品を入れるのであろう。資料では、数種類のケースが存在し、露出計、ファインダー、近接撮影装置、モータードライブ、フラッシュ撮影装置を含むアクセサリーの収納が可能との記述がある。

左写真の右側手前の収納部には、一体何がはいるのだろう？

ケース背面も手抜きが全く無い。ナント、鍵付きジッパー（ＹＫＫ製）である。鍵も付いて、その鍵を収納する革製ケースもついている。錠には NATIONAL の刻印、鍵本体には M.Y の刻印がある。

当時の職人さんの力量を目の当たりにして、もうこれらの手工芸品が入手できないことが残念だ。

ニコンの意気込みを充分に堪能できる、ガゼット・ケースの逸品である。