Wilshire Blvd. と Rodeo Drive が作るＴ字路の終端にあるこのホテルは一時期荒れに荒れたが、現在は見事に再生されビバリー・ヒルズの看板ホテルの一つとして盛業中である。このメイン・ロビーは観光名所となっており、多くの観光客が中に入って「ハイ、パチリ」と記念撮影をしているが、殆どが小型のコンパクトカメラでしかもストロボを光らせているから、「あー、あれじゃ、写ってないだろうな〜」とかいらぬ心配をしてしまう。

荘厳でさえあるメイン・ロビーであるが往時のヨーロッパのホテルの様な趣があり、訪れる人々を魅了する。

真っ暗で何も見えない、、、(^^;ゞが、表の様子をとばしてしまいたくなかったのでこういう絵になった。Summilux-M 35mm と言っても筆者の使用しているレンズは最後期にあたるレンズであり、コーティングのせいかあまりフレアーとかは出ない。但し、設計は古いままであるからシャンデリア電球の形がいびつである。

典型的な翼状のコマ収差が見られ、この開放での描写も ASPH モデルや R 用レンズに数値的には劣るのであろうが、では、このシーンを他のレンズで撮って「より良い」結果が必ず生まれるわけではないし、それよりも開放での「柔らかな」描写を楽しむくらいの余裕があってもイイと思う。

映画 Pretty Woman の舞台になったホテルであるが、外観は別として室内は全てセットで、実際の客室とは違っている。

カリカリにシャープでは無いが、このホテルの風情によく合っているような気がする。周辺光量落ちも奥ゆかしい。ボケ味の「ぶりぶり」した感じが特徴である。開放での描写で特異なのはピントの合っている面が必ずしも一点では無い事である。それがピント面の前後に現れるものだから、見掛け上の被写界深度が深くなる。これは不思議だ。従ってこの開放描写にハマルともうこのレンズを手放せなくなる。

ピーキーなレンズだとガラス器がモダンになりすぎるが、芯のあるしっかりした描写に加えて年代物のガラス器の質感を良く捕らえている。

やはり、被写体とレンズの間にはＴＰＯがあるのだろうか？

このホテルは２棟の建物があり、ロデオ・ドライブの終点にある棟を Wilshire Wing、その奥の高層階を持つ建物を Beverly Wing と呼ぶ。それぞれ建てられた年代が違うが、やはり泊るならば、古い Wilshire Wing であろう。客室内部は完全に改装されており簡素かつ大変に清潔である。このホテルのクラブ・ハウス・サンドイッチは抜群に美味い。パリのブリストルのそれといい勝負である。

ちょっと絞り込めばかっちりした描写になるが、最初に書いたように球面最終型のレンズでありコーティングも新しいのだろうが依然として発光物からのフレアーは残る。、

嫌みの無い描写である。

こういう絵を撮る時に思うのは、そーいえば往年のディズニー映画（アニメ）の背景ってこんな感じではなかったかという事。シャープ過ぎず、かといって柔らかすぎず。このランプは常夜灯であるが、疲れてホテルに戻った客にとって安らかな眠りのイメージを与えてくれる。またまたソー言えば、ディズニー映画も当時のはなにか「眠くなるような」或いは「夢を見ているような」優しいアニメだった気がする。

エレベーターの扉とその上の階数表示。なにか時間がまったりと流れていくような、そういう質感である。このエレベーターの内部がまたまた凝っているのだが今回は撮影しなかった。

チェック・アウト時前後のみ人が居る Beverly Wing のカウンター。

これはオマケである、、、、(^^;ゞ

ただ、この部屋の調度（椅子）が、Beverly Wilshire Hotel のメイン・ロビーに置いてある椅子と同じだったりして、なかなか面白い。